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RO.S.S 『Dark Cage』 エピローグ
2006/12/11(Mon)
さて、いよいよ長く連載してきたRO.S.S『Dark Cage』も最終話となりました。


今回はアフターストーリーのような感じになっております。本編を読み終えた方は是非ごらんになってください。


本編をまだ読んでない方はこちらからどうぞ。


Dark Cage タイトルロゴ


RO.S.S『Dark Cage』 エピローグ:手紙

その日から、あの悪い夢は一度も見なくなった…。
神の存在を信じるかどうかはともかく、彼女は少なくとも奇跡の存在は信じるようになった。





「ハルエラ様、終わりました」

隣の部屋からが女性が一人出てきて、ハルエラにそう告げた。窓の外を眺めていたハルエラはその言葉に振り向いた。

「まぁ、それじゃあ、見せてちょうだい」

彼女がそういうと、女性は軽く頷き、一度閉めた部屋のドアをもう一度開ける。ドアを開けた先には、ドレス姿のリエルが立っていた。

「あらまぁ…とっても似合ってるわよ、リエル」

ハルエラは穏やかな表情でリエルに歩み寄る。リエルは少し恥ずかしそうだった。

「ホ、ホントですか?」
「ええ、サイズもぴったりだし、その色はあなたに似合ってるわ」

リエルが着ているのはウエディングドレスだった。しかもわざわざハルエラが職人にオーダーメイドで特注したものだ。薄く青みがかった生地に、胸の部分には花飾りがついている。

「お相手の方、とっても優しい方なんですってね」
「はい」

リエルは5日後、式を挙げることになっていた。その式の準備も、ハルエラ自らがコーディネイトしていた。

「あなたのこんなにかわいらしい姿が見れて、私も幸せですよ」
「ハルエラ様…ありがとうございます」
リエルも笑顔を見せる。
と、その時部屋の外から大きな声が聞こえてきた。

「ハルエラ様、ハルエラ様ー!!」

はっとして、ハルエラがドアのほうに目をやる。飛び込んできたのは…

「…ケイン」

手紙を抱えたケインだった。ハルエラはしばらくボーっとしていた。

「ハルエラ様…?」

リエルもケインも不思議そうに彼女を見つめた。その視線を感じて、彼女は我に返った。

「ごめんなさい…今のあなたの姿が、あの時のあの子に似ていたものだから…」

リエルは思い出した。確かあの時も、あいつが同じようにハルエラ様の名前を呼びながら…

「それで、今日はどうしたの?手紙を持ってきてくれたのかしら?」
「え、ええ、そうなんですけどね。そのあいつから、手紙が来てますよ!!」

ハルエラが再び笑顔になった。。

「まぁ、それじゃあ、早速読ませてちょうだい」

ハルエラはケインから一通の手紙を受け取った。そして手紙の封を切る。
封筒の裏には、ちゃんと『Dio=Calnus』の名前も添えてあった。

「何が書いてあるんです、ハルエラ様」
「まぁまぁ、急かさないでちょうだい。今読んであげますから」

リエルもケインも興味津々な様子だった。それもそのはず、彼から連絡があったのはあれから半年ぶりなのだ。もっとも、城に戻ったマリーから大体のいきさつは聞いたのだが。
ハルエラは封筒の中から便箋を取り出すと、それをもって自分の机に座った。そして、引き出しから眼鏡を取り出し、それをかけてから文面に目を通した。

『親愛なるハルエラ様、そして城の皆様へ』

最初の一行にはこう書いてあった。字が波うっていたり途中途切れている部分もあり、幼児が書いたような文章に見える。ましてやありきたりな文句だが、今の彼女らにとってこれほど嬉しい言葉はない。

それからハルエラは続きを読み始めた。



ハルエラ様、そして城の皆様、元気でお過ごしでしょうか。俺と彼女は元気にやっています。まだうまく右腕が使えないのでこんな見難い字になってしまいましたが、お許しください。

あの事件以来、アルデバランにあるラルフ先生の診療所で右腕のリハビリを続けています。あの時の戦いで、俺の右腕は神経がかなり傷ついたらしく、今もまだ自由がききません。でも、先生は信じてリハビリを続ければ必ず治るといってくれました。俺もそう思います。信じることの大切さは、ハルエラ様、あなたから教わったことですから。

剣の修行も続けています。もう一人前の聖騎士…って言いたいところだけど、まだまだ未熟なままみたいです。あの時、昔ハルエラ様に教えていただいたあのスキルが使えたのも偶然だったみたいで。あ、だからって修行さぼってるわけじゃないですよ。

彼女はハルエラ様と同じ、神に仕える修道女の道を選びました。いつかハルエラ様のような立派な修道女になりたいと、彼女自身も言っていました。俺も彼女にはそうなって欲しいです。




「相変わらずですね、あいつ」

リエルが苦笑している。ケインも同様に。
ハルエラも小さく笑い声をたてながら、続きを読んだ。



俺は今回の件で改めて色々なことに気づかされました。上に書いたように信じることの大切さや、それ以外にもたくさんのことを。

そして今でも忘れられません。アルデバランに戻った日、先生と一緒に暮らしているクレアって女の子が言った言葉が。






その日3人がアルデバランに帰りついたのは陽も沈んだ後だった。あまり時間がたったようには思えなかったのだが、時間が過ぎるのは早かった。

診療所のドアを叩くと、出迎えたのはクレアだった。

「皆さん!!ご無事だったんですね!!」
「ああ、先生は?」

部屋の中を見渡すが、ラルフの姿はない。なぜかクレアの顔がにやけていた。

「そのうち出てきますよ…ほら」

クレアの目線がキッチンのほうへと向いた。向こうから現れたのはエプロン姿のラルフだった。

「クレア、ちゃんと火の番してろって…」
「…」

懐疑のまなざしが一同から一斉にラルフに向けられる。

「…ってぇ、お前さんたちもう戻ってきたのかぁ!?」
「あのエプロン…女物よね…」
「先生の趣味があんなんだったとはな…」

ディオとマリーが小声で囁きあう。それを見てラルフが慌てて説明した。

「あのなぁ、これはクレアがいつも使ってるやつだ。今日はお前さんたちのために特製スープ作ってたから使ってただけだ」
「へぇ…」

いまだ怪しむような目つきでラルフを見つめる二人だが、彼はそれを無視して本題に戻った。

「…で、後ろにその子がいるってことは、どうやらうまくいったみたいだな」
「え、ああ、はい」

その時、マリーの足元がふらつく。クレアがすかさず支えに出た。

「ごめんなさい」
「ひどい傷ですね…すぐ治療しないと!!」
「よし、スープの前に手当てするか。クレア、お前はそっちを見てくれ。俺はこいつを見る」
「はい」

そういって、クレアはマリーを連れて別の部屋へと移動していった。ラルフはとりあえずディオを椅子に座らせ、右腕を見せるように言った。

「こいつは…ひどい」

ディオの右腕は血で真っ赤に染まった包帯で巻かれていた。所々火傷も見られる。向こうで止血などの応急治療は施したが、それで治るような傷ではなかった。
「よく無事だったな」
「無我夢中でしたから…」
「とにかく、すぐに治療する。スープは冷めちまうが、んなこと言ってる場合じゃないな。キリカ、お前さんも手伝ってくれ」
「は、はいッ!!」

そういうと、ラルフはエプロンを外し、白衣を着けた。



その日の深夜、ディオ達はかなり遅めの夕食をとった。
あの後、ラルフの薬やクレアの治療のおかげでマリーの傷については治療に成功した。だが、ディオの右腕はそううまくはいかなかった。外傷は薬や魔術で治せても、切れた神経までは元には戻らない。これを直すためには、時間とリハビリが必要だった。

ディオもそれを覚悟していた。本来、あの時避けようと思えば避けられた攻撃をあえて受けたためについた傷だ。それは同時にこうなることを受け入れる覚悟を持った彼の決断でもあった。

だから、彼はその話題は特に触れようとはしなかった。他のメンバーもそんな彼の気持ちを察してか、夕食中はたわいもない話で盛り上がる。
途中、不意にラルフがディオ達に尋ねた。

「そういや、お前さんたち、これからどうするんだ?」

ラルフ特製のスープを堪能していたディオが、スプーンを置いた。
彼が口を開く前に、先にマリーが答える。

「私は城に戻るわ。今回のこと、正式に国王に報告しなきゃいけないし。ああ、でも心配しないで、あなたのことはうまくごまかしておくわ」

マリーはキリカに向かってウインクしてみせた。本来なら彼女が犯した罪は重いが、スカディの存在、そして刻印やプロジェクトD.C.のことがある。軍とてこれらの実情を明るみに出すことは得にはならない。うまく話せば最悪でも特赦は得られるだろう。

「ディオ達は?」
「…そうだな」

ディオは少しの間考えていた。だがやがてキリカの顔を見て、何か決心したように軽く頷いた。

「とりあえずこの腕直さないといけないしな。しばらくは先生のお世話になることにするよ。先生にはもうそのことは話してあるし」
「そう…ね。でも、その後はどうするの?城にはやっぱり戻らない?」

ディオは首を横に振った。

「いや、いつか必ず戻るよ。でも、その前に俺、色々と考えたり、いろんなとこ旅したりしてみたいんだ」
「…」

マリーやラルフたちは黙って聞いていた。

「きっと世界中には…俺達みたいに親に捨てられたり、それ以外にもひどい目に逢ってる子供達がいる。そういう現状をしっかりと目に焼き付けたい。そしてできる限り助けてやりたいんだ」
「助ける…」
「ああ、ハルエラ様が俺に信じることの大切さを教えてくれたように、俺もその子達に教えてやりたい」

ディオは飛びっきりの笑顔を見せた。マリーは少し安心した。

「お前さんはどうなんだ?」

ラルフがキリカに振った。キリカはなぜか少し浮かなそうな顔をしている。

「何か悩んでるの?」
「…わからないんです、これからどうしたらいいのか」
「…」

短い沈黙が流れる。

「私はつい先日まで、6年前以前の記憶をなくしていました。今はおかげさまですべて思い出せましたけど、でもやっぱり自分が何者なのか、どうしたらいいのか、迷うんです」
「お前さんはお前さんじゃないか、キリカ」
「キリカ…というのも、本当の名前じゃないんです」

ラルフはハッとした。そうだった。彼女のキリカという名前は育て親が彼女につけた名前だ。

「私の本当の名前、生みの親がつけてくれた名前はシンシア…シンシア=ハーティリー」
「そう…だったのか」

複雑な気持ちだった。ラルフもマリーも何もいえなかった。

「わからないんです。これから私はシンシアとして生きていけばいいのか、それともキリカとして生きていけばいいのか…」

部屋が静まりかえったその時、彼女が口を開いた。

「キリカさんはキリカさんですよ」

クレアの声。一同がはっとして彼女に目をやった。キリカは彼女の言葉にキョトンとしていた。

「え?」
「センセーからよく聞かされました。最終的に決めるのは自分だって。あなた自身は、どっちの自分がいいんですか?」
「私は…」

クレアがいつになく真剣な表情で彼女にまなざしを送る。

「私も、両親にひどい虐待を受けました。そして山に捨てられて倒れていたところをセンセーに助けてもらいました」
「クレア…」
「見ず知らずの私を助けてくれたセンセーにはとても感謝しています。だから今ここで働いています。でも、私がクレア=『ウォルター』の名前を名乗るのは、自分でそう決めたからです」
「クレアさん…」

戸惑うキリカに、横からディオが穏やかな表情で言った。

「そういうこと、さ。名前をつけるのは他人だが、どう名乗ろうとそれは本人の意志次第だ。それに、キリカはもうそんなに弱い人間じゃないはずだぜ?」
「どうして…ですか?」
「スカディがキリカの体から消滅したのは、君が自身の力で目覚めたからだ。あんな悪魔の誘惑や圧力に負けなかったんだ。君は十分強いよ」
「でもあれはディオさんが…」
「俺はその手助けをしただけさ。紛れもなく、あれは君自身の力だ。だから、君が名乗りたいように名乗ればいい。もっとも…」

ディオは再び笑ってみせた。

「俺は君のこと、これからもキリカって呼ぶけどな。それが俺の知ってる君だから」
「ディオ…」

マリーもラルフも笑った。そしてクレアも。
キリカは、自分の中にあったもやもやが一気に晴れた気分だった。




「なんだか、城にいた頃よりも随分たくましくなったみたいね」

ハルエラは嬉しそうだった。彼が城を出て行ってからその安否を気遣わない日はなかったが、彼が一回り成長したことがわかってホッとした。

「それで、手紙にはまだ続きがあるんですか?」

リエルが覗き込むと、ハルエラは頷いた。

「ええ。続きを読むわね」

ハルエラは手紙を再び読み始めた。




彼女も俺も、ようやく自分自身の存在を確かめられたんだと思います。でも、俺思うんです。確かに最後に決めるのは自分だけど、それができるのはきっと回りにたくさんの人々がいるからだろうって。そういう意味で、俺は幸せ者だと思います。

それと、彼女はこうも言っていました。俺達が倒したあの悪魔、破壊の女神の名を持つスカディは、もう一人の自分だったのかもしれない、と。心無い人間に利用されたという意味では、彼女もある意味被害者なのかもしれないと、最近はそう思うようになりました。彼女も毎日祈りを捧げています。もしあいつに信頼できる仲間がいれば、もしかしたらあいつを殺さなくてもいい方法が見つかったかもしれません。今更悔やんでも仕方ないのですが。

何はともあれ、俺や彼女の罪も許されたとマリ姉からの手紙で知って、こちらも安心しています。




「破壊の女神も…被害者、か」

ケインが神妙な面持ちでつぶやいた。

「普段私たち人間とモンスターは互いに敵対する関係にあるけれど、あいつはそこにも疑問を持ったのね」
「そうね。あの子はとても優しい子だから…」
「ところで、手紙はそれで終わりですか?」

リエルが尋ねると、ハルエラは首を横に振った。

「いいえ、まだ続きがあるわ。最後に、あなたのことが書かれてるわよ」
「私の…?」
「読むわね」




そうそう、そういえばマリ姉からの手紙を見て驚きました。リエルが結婚するそうですね。あいつとは俺が城に来た頃から兄妹同然で育ってきた仲なので、俺としても嬉しい限りです。あいつのことだから、旦那になる人は尻にしかれそうだけど(笑)

先生に相談した結果、リエルの式に出席することを許可してもらいました。まだリハビリは続けないといけないのですが、式の前後だけでも一度プロンテラに戻ろうと思います。もちろん、彼女と共に。

まだ言うのは早いかもしれないけど、リエルに伝えてください。「おめでとう」と。


式の二、三日前にはそちらに到着する予定です。ハルエラ様や城の皆様と会えることを楽しみにしています。それでは、また。


                                                         Dio=Culnus



「あのバカ…」

ハルエラが手紙を読み終えたとき、リエルは涙ぐんでいた。そんな彼女をハルエラは優しく抱き寄せた。

「あなたのお兄さんは本当に優しいわね」
「…はい」

リエルは泣きながら、それでも無理やりに笑顔を作った。
明日か明後日には半年振りに彼に会うことができる。ハルエラも、リエルも、あるいは他の城の者達も彼の到着を待ちわびるに違いない。

窓の外で教会の鐘の音が澄みきった首都の空に響いた。リエルの新たな門出を、そしてあの二人の帰還を祝福するかのごとく…。


RO.S.S 『Dark Cage』 完




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