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RO.S.S 『Dark Cage』 第9話
2006/11/12(Sun)
さて、現在連載しているRO.S.S『Dark Cage』の最新話です。物語はいよいよ核心へと近づいていきます。このS.Sタイトルの意味もわかるはずです。


これまでの話を見てないひとはこちらからどうぞ!!



Dark Cage タイトルロゴ


RO.S.S 『Dark Cage』 第9話:暗紅の悪魔


雨が降りしきる中を少女はただひたすら走っている。体を伝わる雫にどす黒い血が混ざる。両手足には鎖、それがなぜ自分にかけられているのかも忘れるほど、彼女は今恐怖と絶望に支配されていた。

勢いのあまり、石につまづいて彼女は転倒する。必死にもがいて起き上がったとき、彼女は水溜りに映った自分の顔を見た。それは彼女自身の顔ではなく、見たことのない女性の顔のように見えた。

そして少女はまだこの時、自分の体に起きた異変に気がついていなかった。




うつむいていたキリカの体から、彼女とは違う誰か別の声がした。ディオは瞬時に彼女と距離をとり、身構える。

「誰だっ、お前は!?キリカに何しやがった!?」

いきり立つようにディオが彼女に向かって叫ぶ。すると、キリカの体からまた先ほどと同じ声がする。

「誰って…正真正銘、あの子自身よ。もっとも、あの子の魂は今は眠りについてるけど」
「何だって…!?」

ディオは混乱していた。一体彼女の体に何が起きたのか。突然キリカが苦しみだして、今はまるで口調が変わってしまっている。

「そう、あなたが封印を解く手助けをしてくれたんだったわね」
「封印…?」

何のことかわからないディオの後ろから、ヴェルナーの罵声が飛ぶ。

「貴様…何ということをしてくれた!!」

ヴェルナーの声は微かに震えていた。

「一体何のことだ!?それにヴェルナー、あんたはあいつのこと何か知ってるのか!?」
「あの女…魔女はもはや人間ではない。貴様のせいで、魔女の中に眠っていた『奴』が目覚めてしまった…」
「『奴』…?」

その時、キリカの体からあの声の主が不気味な笑い声を響かせた。

「アハハ、流石人間ねぇ。種をまいたのは自分達のくせに、同じ人間に罪をなすりつけるなんて」
「どういうことだ…!?大体お前は誰だ?なぜキリカの体を借りて喋ってる!?」
「そう、あなたはやっぱり何も知らなかったのね」

声の主はディオを哀れむように見つめながら、今度はヴェルナー達を蔑むような目で睨んだ。
ヴェルナーは剣を抜き、兵士達に号令をかける。

「皆、構えよ!!あの者を殺せッ!!」

兵士達が武器を構え、ディオではなく、キリカのほうに向き直る。ディオは慌ててとめた。

「待て!!やめろッ!!」

しかし、ヴェルナーはいつになく強い、しかし焦りの見える口調で続けた。

「目覚めたばかりの今なら倒せるはずだ!!かかれッ!!」

その号令と同時に、兵士達が一斉に彼女に襲いかかる。

「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

ディオが彼女の盾になるため駆け寄ろうとするが、それを後ろからマリーがおさえる。

「ディオ、待って!!」
「マリ姉、離してくれ!!あの子を守らないといけないんだ!!」
「ダメよ!!もう彼女は…」

そう彼女が言いかけたとき、あの声の主が今度は低い声で言い放つ。

「確かにまだアタシの力は完全には目覚めてないわ。でも愚かな人間ごときに、このアタシがまたやられるとでも思っているのかしら」

キリカ、正確にいえば体だけキリカである声の主は手をかざし、何かをつぶやく。すると、彼女の腕から無数の思念体、いや、怨霊のようなものが次々に現れ、彼女に襲い掛かる兵士達めがけて飛んでいく。

「う、うわっ、何だこれは!?」

兵士達は正体不明の物体にたじろぐ。だが、次の瞬間、怨霊たちは兵士たちの腕や足、あるいは頭など、彼らの体をもぎとった。

「ギャアアアアアアアアアアア!!!」

兵士達の悲鳴が部屋にこだまする。瞬く間に、半数以上の兵士達が絶命し、その場に倒れていく。

「…!!」

ディオはその光景に戦慄を覚えた。今まで彼が共に旅をし、ここまでやってきたキリカの姿からは到底かけはなれていた。あの清楚で、物静かな彼女と違い、今の彼女は狂気に満ちていた。

ヴェルナーはあまりに一瞬の出来事に、言葉を失う。味方の半数以上が、彼女の腕の一振りだけで殺されたのだ。彼自身の中でも恐怖という感情が高まっていく。

「ふん、やっぱり人間なんてこの程度なのね」

声の主は再びディオのほうに向き直った。

「さて…その顔から察すると、まだ事情が飲み込めていないようね」

彼女の言うとおり、未だに彼にはこの現場で何が起きているのか、ほとんど理解できていなかった。

「ならアタシから教えてあげるわ。アタシを呼び覚ましてくれたお礼にね」

声の主は近くにあった実験台に腰掛けると、不気味な笑顔を見せながら語り始めた。





「今から6年前、この場所で人がたくさん殺された事件のことはあなたも知ってるはずよね?でも、なぜたくさんの人が殺されたと思う?そして、何があったのか、あなたは知りたくないかしら?」
「あんたは…知ってるっていうのか、その事件のすべてを」
「ええ、もちろん。だって私も当事者の一人ですもの。あの時、この施設ではある実験が行なわれていたの」
「ああ、それは何となく予想がついてた」
「そう、なら話は早いわね。先にあなたが知りたがってる私の正体のことを教えておくけど、私は人間じゃないわ。あなた達から見れば、私はモンスターと呼ばれる存在よ。科学者達は私のことを『スカディ』と呼んでいたわねぇ」
「スカディ…?確か神話に出てくる破壊の女神の名前…」
「あら、そうなの。なるほど、破壊の女神ねぇ…悪くないわ」

ディオの表情が少し変化する。だが、彼はそれを押し殺して黙って彼女の話に耳を傾け続ける。

「こう見えても、アタシ結構強いの。でもその実験の2年前、つまり今から8年前、人間達はなぜか多大な犠牲を払ってアタシを生け捕りにしてね。もっとも、生け捕りといってもアタシはその時は瀕死状態だったけど」
「生け捕りだって…?」
「そうよ。そして生け捕りにされたアタシはここに運ばれ、愚かな人間達の科学という技術を持って体と心を分離させられた。すべてはその人間達が企てていたある一つの計画のためにね」

後ろにいるヴェルナーやマリーの表情がこわばるのがディオにもわかった。

「その計画は『Dark Cage』、プロジェクトD.C.と呼ばれていたわ」
「Dark Cage…?」
「そう。その内容は、このアタシの力を利用し、あなたの国を支配しようとした科学者達によるクーデターとでもいうべきものかしらね」

ディオは息を呑んだ。

「おそらく後ろにいるそっちの奴らはこのことを知っていたんでしょうけどねぇ」

そう言われ、ディオは後ろを振り返る。

「本当なのか、ヴェルナー。てめえら、今回の件、全部知ってたのかよ!?」
「…くっ」

ヴェルナーはばつが悪そうな表情を見せた。しかし、代わりにディオを抑えていたマリーが答える。

「ディオには伝える機会がなかったんだけど…あいつの言ってることは本当よ」
「クーデターって何なんだよ!?それと彼女が、刻印が何の関係があるっていうんだ!?」

彼の声にはもはや完全に怒りが現れていた。

「落ち着いて、ディオ。ちゃんと説明するから」

そういうとマリーは小さくため息をついた。

「8年前、この施設で研究を行なっていた科学者達が国王、もっといえば私たちの住んでる国ミッドガルドに対してクーデターを計画していたの」
「それはもう奴から聞いた」
「その計画は、モンスターの力を利用して私達プロンテラ軍を壊滅させ、一気に国を制圧するというものだったのよ」
「何だって…!」
「そしてその計画は、ただモンスター達に私達を襲わせるといった単純な話じゃなかったの。より強力な生物兵器を作り出すため、彼らが計画したのがさっき出た、『プロジェクトD.C.』よ」

マリーがそこまで説明したとき、後ろからスカディという名前を持ち出した彼女が今度は憎しみを交えた声で割り込んだ。

「その計画、『プロジェクトD.C.』は、一度アタシの体からアタシの魂だけを取り出し、愚かな人間達が科学技術を用いて作り上げたより強力な「体」にアタシの魂を移し変えて制御するというものだったのよ。そしてその強力な「体」を求めて、科学者達はたくさんの犠牲を払った。何人もの人間がこの場所で実験のために殺されたり、死んでいったりしたわね」

スカディは足元に落ちている紙切れを拾い、それをディオのほうに飛ばした。ディオがそれを受け取ると、それは先ほどキリカが発見したNo14.のリストだった。

「そして選ばれたのがそのリストに載ってる子よ」
「な…」

写真を見る限り、まだ幼い少女だった。そしてその写真は誰かに似ていた。名前の欄には『Sincia=Hartyrie』と書かれてあった。
彼の中に嫌な予感が走った。

「まさか…」
「そう。その子こそ、あなたがここまで連れてきたこの子。そしてそこに書いてある名前がこの子の本当の名前よ」

ディオは言葉を失う。

「彼女はあの日、実験の最終過程として、その体内にアタシの魂を注ぎ込まれたのよ。アタシが言うのもなんだけど、そのときの彼女の悲鳴ったらなかったわよ。アタシにまでその恐怖が伝わるくらいにね」

その光景を想像することを、ディオはできればしたくなかった。だが、その時の彼女の痛み、苦しみは嫌になるくらい容易に想像できた。

「科学者達は『体』のことを『Dark Cage』と呼んでいた。アタシのような悪魔をその体内に封じ込める『檻籠』の役目を担っていたのよ、彼女は。もっとも、それは彼女の意思ではないけれど」
「嘘だ…」

ディオがつぶやく。だが、スカディはさらに続ける。

「つまり、彼女は科学者達によって生物兵器の媒体として利用されることになっていたってわけ。彼女の体につけられた刻印もその証。あれは一種の魔術のようなものだけど。でも、最終段階で問題が起きた」

リストを握るディオの手が震え始める。

「科学者達の予想以上に彼女の精神は扱いにくくてね。本来なら彼女の心は完全にアタシの魂に支配され、体の中で深い眠りにつくはずだったんだけど、アタシの魂と競合を始めたの。アタシもそのときは自分で自分の魂をコントロールすることはできなかった。その結果、実験体である彼女の暴走が起きた」
「やめろ…」

ディオは耳をふさぐ。だが、スカディは容赦なく声を張り上げていった。

「その暴走の結果、彼女はその場にいた研究者達を皆殺しにしたのよ。見るも無残なくらいにね」
「やめてくれぇぇぇっ!!!」

彼は叫び、体を震わせ、リストを握ったままその場にうずくまる。スカディはそんな彼を見てニヤリと笑った。

「ここにくる途中、彼女一度血を欲したでしょう?あれも彼女が媒体となったせいよ。というよりも、アタシのせいといったほうがいいかしら。アタシみたいな悪魔はね、血がないと生きていけないの。そしてアタシと体、そして魂を共有している彼女自身もそれは同じ。だからあの時も、彼女は殺した研究者達の血をすすっていたわ。あなたの血も、なかなかおいしかったわよ」

ディオだけでなく、後ろで黙って話を聞いていたマリーも必死に吐き気をこらえていた。スカディはそんな二人を見て面白がるように笑った。

「その後、研究所を飛び出した彼女は雨の降る中を必死に走ってた。この時点で、既に体の中では彼女の意識、魂のほうが強かった。だけど、相当ショックが大きかったんでしょうね。研究者達はもういないのに、恐怖に怯えながら逃げてたわ。そして途中で倒れ、そのまま気を失った。彼女が記憶をなくしていた理由の一つもたぶんそれね。もっとも、刻印の力でもともとそうなるようにプログラムされてたみたいだけど。」
「…」

何も言葉が思いつかない。というより、絶望と恐怖のあまり、彼自身が我を忘れかけていた。

「アタシもそのときに完全にこの子の体の中で身動きが取れなくなって今まで影に埋もれてたけど、あなたがここに連れてきてくれたおかげでこの子はすべてを思い出し、刻印の効果も消えた。おかげでアタシは晴れて表に出てくることができたわけよ」
「じゃぁ…じゃあ、俺は…」

彼女の言葉が本当なら、ディオは彼女の中に眠る悪魔の封印をわざわざ解いてしまったということになる。

「アタシをうらまないでよ。恨むなら、この子を犠牲にして国を支配しようなんてことを考えた同じ人間達を恨むことね。もっとも、アタシはあなたには感謝してるんだけど」

スカディは一人高笑いを続けた。ディオをおさえていたマリーが励ますように声をかける。

「ディオ、あなたのせいじゃないわ…」
「俺は…彼女を信じてここまで…でも、そのせいで彼女は…っ!!」

マリーの声は今の彼には届いていなかった。
その時、スカディが高笑いをやめ、ヴェルナー達を睨みつける。

「さて、と。アタシをこんな目にあわせた人間達にはきっちりお返しをしてあげないとねぇ。この子もきっとさぞかし人間を恨んでるでしょうから」
「ヒ、ヒィッ…!!」

ヴェルナーや生き残っていた兵士達は恐怖におののき、入り口から外に出ようと駆け出す。しかし、スカディはそれよりもはやく、再び腕を彼らに向けて振りかざした。

「アタシから逃げられるとでも思ってるの?」

怨霊が再び彼女の腕から生まれ、拡散して兵士達を襲う。たちまち、部屋に兵士達の断末魔がこだました。

ヴェルナーは必死になって自らの剣を振り回し、彼に近づく悪霊達をなぎ払った。だが、あと少しで部屋から脱出できるというところで払いきれなかった悪霊に頭をもぎ取られる。即死だった。

「隊長!?」

マリーはその光景を見るや否や、剣を抜き去り、スカディに向かって斬りかかった。

「よくもぉぉぉぉぉぉ!!!」

だが、スカディは余裕を持ってそれを交わし、冷たく言い放つ。

「あんたも目障りなのよ。消えなさい」

すると、スカディの爪が鋭く伸び、マリーの胸部を切りつけた。

「!!」

マリーはその場に倒れる。だが、倒れたマリーに対して、スカディはさらに追い討ちをかける。

「ふん」

マリーの体を彼女は思い切り蹴飛ばした。数メートルほど、彼女の体が吹っ飛び、床に叩きつけられる。

「マリ姉!!」

彼の横にまで吹き飛ばされたマリーの横たわっている姿を見て、ディオはさらに恐怖に支配された。マリーの元に駆けつけたくても体が言うことをきいてくれない。

そしてそんな状態の彼に、スカディが伸びた爪についたマリーの血を舐めながら言った。

「アタシを呼び出してくれたことには感謝はしてる。でも勘違いしないで」

スカディの声は嫌になるほど冷たかった。

「あなたも同じ人間にかわりはないわ」

スカディが一歩ずつ彼に近づいてくる。ディオは逃げようとしたが、やはり体は動かない。動かないのに、体自体は大きく震えていた。

「そうそう、一つ言い忘れてたことがあったわ」

わざとらしくスカディは笑みを作る。

「あなた、覚えてないようだから教えてあげるけど、昔この子に一度会ってるのよ」
「な…そんなバカな!?俺は8年前に親に捨てられてから、ずっと城で…ッ!!」

焦るディオに、スカディは小さく笑い声を出しながら続ける。

「やっぱり覚えてないのね。アタシはね、この子と魂を共有したことでこの子が見た過去もわかるの。8年前のあの日、たくさんの子供達が乗る馬車の中で、この子はあなたと一度目が合ってるわ」
「…!?」

馬車の中…彼は8年前、確かに親に捨てられたあと、馬車に乗っている。そしてその馬車の中で、目の前に座っていた少女と…

彼の脳裏にさっきの写真の少女がよぎる。そして8年前の記憶とその写真の少女が交錯する。

「嘘だ…そんな…じゃあまさかあの時の女の子が……!?」

彼の額には汗が滲んでいた。震えがさらに大きくなる。

「あの馬車に乗ってた人間はみんな実験体として連れてこられたのよ。もちろん、あなた自身もね。この子はおそらく、すがる気持ちであなたを見ていたんでしょうね。『どうか助けてください』って。でも、あなたは目をそらした」

いつの間にか、スカディは彼の目の前まで近づいていた。だがもはや彼は逃げる気力すら残っていなかった。ただ震えがとまらず、自分の犯した罪の重さに絶望を感じていた。

「あなたが馬車を抜け出したときこの子がどう思ったか、そこまではわからないけど、アタシならどう思うか、教えてあげましょうか?」

スカディは彼の肩に手をやり、抱き寄せるようにして彼に体を近づけ、耳元でそっと囁いた。

「…この卑怯者」

次の瞬間、ディオは口から血を流していた。それに気づいた後に、腹部に激しい痛みを覚える。

スカディが鋭い爪で彼の腹部を突き刺したのだ。

彼女が爪を抜き取り、一歩下がると、ディオは声もあげずにその場に倒れた。
それを見て、スカディは再び高笑いした。

「フフフ…アハハハハハッ!!!」

一通り笑い終えた後、スカディは倒れているディオを見下ろす。腹部からは大量に出血していて、彼はピクリとも動かない。

「あなたはなかなか面白い子だけど、人間である以上アタシにとっては憎い存在であることに代わりはないわ。残念だけど、このまま死んで頂戴。せいぜいあの世でこの子に謝ることね」

スカディは再び爪を振り上げた。

だが、その時二人の間に人影が飛び込んだ。キーンと金属音が鳴り響く。
立っていたのは、スカディに斬りつけられたはずのマリーだった。

「くっ…!!」

マリーは大きく剣を押し込む。スカディは思わず後退した。

「ちっ…」

その隙に、マリーは倒れているディオを抱き起こす。

「ディオ!!ディオ、しっかりして、ディオ!!」

だが、ディオの返事はない。そしてそうこうしているうちに、スカディが腕を振りかざした。

「そんなに死に急ぎたいなら、二人まとめて殺してあげるわ!!」
(まずいッ!!)

スカディの腕から怨霊が生まれてくる。だがそれよりもはやく、マリーはポシェットから何かを取り出し、ディオをしっかりと反対側の手でつかんでそれを放り投げた。

「くっ!!」

その瞬間、二人を光が包み込む。そして一瞬のまばゆい光は消え、二人の姿もその場からなくなっていた。代わりにそこには2枚の蝶の羽が落ちていた。

「なるほど、空間転移のアイテムというわけね。そう、また逃げるんだ…。ククククク…アハハハハ!!」

一人残ったスカディはまた部屋中に響き渡る高笑いを見せた。






一方、何とかその場を脱出した二人は、どこかの通りの隅に放り出された。

「くっ…ここは…?」

マリーは起き上がり、辺りを見回す。回りには民家が見え、すぐそばには時計塔が聳えている。どうやらうまくアルデバランに戻ることができたようだった。

マリーは傍らのディオを振り返る。ディオは相変わらず動かない。マリーがすぐに脈を取ると、幸いにもまだ脈はあった。

だが、悠長にはしていられない。ディオが危険な状態にあることに変わりはないのだ。すぐに治療しなければ命に関わる。

辺りは真っ暗だった。それもそのはず、外はもう夜を迎えていて、今夜は月や星も見えない。今になって気づいたのだが、二人は雨に打ちつけられていた。そのせいか、人影も全く見えない。

マリーはディオを肩で支えるようにして立ち上がり、歩き出す。一体これからどこにいけばいいのか、二人きりになってしまったマリーにはそれすらわからない。だが、ここにいてもディオは助からない。今はただ、彼を運ぶことしかできなかった。

しかし、数十メートルも進まないうちにマリーはディオと共に倒れこむ。胸を押さえると、手についた血が雨でにじんでいた。彼女の傷も決して浅くはないのだ。起き上がろうとするが、全身に力が入らない。

だんだんと意識が薄れていく。冷たい雨に二人の体は容赦なく打ち付けられた。目がかすれて、回りの音、雨の音すら消えていく。

その時、微かに自分達の目の前で誰かが立ち止まる音がした。マリーがそれを見上げる。古い革靴が見えた。

だが、それが誰なのかを確認する前に、彼女は気を失った。

(第10話に続く)





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