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RO.S.S 『Dark Cage』 第8話
2006/11/05(Sun)
さてさて、現在連載中のRO.S.S『Dark Cage』の最新話です。物語はいよいよ核心へと入っていきます。


これまでの話を読んでいない方は是非こちらからどうぞ。


それでは、最新話をお楽しみください。


Dark Cage タイトルロゴ


RO.S.S 『Dark Cage』 第8話:消える彼女

「イヤだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「キャアアアアアアアアア!!」
「助けて、ママ…痛いよぉ…」

毎日一人、また一人…と悲鳴が聞こえる。薄暗く寒い独房の中で、その少女はただ怯えるばかりの生活を送っていた。この中に入った当初はあれだけいた「仲間」も、今では数えるほどにまで減ってしまった。一度独房を出ると、誰も戻ってこなかった。

おそらく近いうちに彼女がそうなるであろうことも彼女自身よくわかっている。しかし、彼女にはどうすることもできない。逃げ出すことも抵抗することも。

そして、仮に抜け出せたときの行く宛も彼女にはなかった。





二人はその日の午後、ラルフが言っていた森に到着した。

それほど大きくはないが、かなりうっそうとした森で昼間でも暗い。おまけに今日は昼から雲が出てきて、余計に暗さを増していた。ラルフの話によると、この森のちょうど中央部のあたりに目指す研究施設があるとのことだった。

二人とも、アルデバランを出発してからずっと無言のままだった。特にキリカは何か思いつめたような表情でただ黙って歩いていた。いつもなら声をかけるディオも、今日は彼女に話しかけることはない。

ディオにもわかっている、彼女が緊張していることが。昨日のラルフの話を聞く限り、やはり彼女の過去はあまり受け入れやすいものではないようだ。ラルフは「実験体」という言葉を用いていたが、それは決して響きのいい言葉ではなかった。

(彼女がもし何かの実験の被験者だったとしたら…そのせいで彼女は…)

先日洞窟で見せたあの変貌も、これまで彼女が背負ってきた運命も、すべてはその実験にかかわりがあるのだろう。刻印もそのせいなのかもしれない。

だが、彼女はそれでも過去を知るという道を選んだ。どれだけ辛い過去が待っていたとしても、彼女はそれを正面から受け入れようとしている。そんな彼女にディオができることは、彼女を信じ、その助けとなることだけだった。

木々の枝に止まった鳥が不気味に鳴き声をあげる中を、ディオは気圧されないようにしっかりと歩いた。

やがて陽が傾き始めた頃、二人は森の中に聳える一軒の建物を見つけた。

「あれか…」

見た目は古い洋館である。もう何年も人の出入りがないのかかなり荒れているが、それ以上に何か不気味な雰囲気を醸し出していた。

キリカが、そっとディオの手を握った。

「ディオさん…」
「大丈夫か?」
「…はい。行きましょう」
「わかった。けど、もし気分が悪くなったりしたらすぐに言うんだ」

彼女は小さく頷き、それを確認したディオは彼女と共にゆっくりと洋館の中へと足を踏み入れた。

中はやはり薄暗い。ディオは念のためカバンからランプを取り出し、火を灯す。ランプの明かりに照らされて通路がほんのり明るくなった。

壁には古びた絵画がかけてあり、床には割れた花瓶の破片が落ちていた。ディオはそれらを踏まないように注意しながら奥へと進んでいく。今のところ、あまり研究施設というような感じはなく、普通の家となんら変わりはなかった。

だが、キリカを振り返ると、何かに怯えているように彼の服をしっかりと握り、できるだけ離れまいとしていた。何か思い出したことがあるのか、それとも…。

二人は一階、二階と順番に調べていったが、特に怪しい所、あるいは彼女の過去につながるようなものは見つからなかった。また人の気配はもちろんのこと、モンスターの気配も全く感じられなかった。

「おかしいな。ラルフ先生の言ってた場所はおそらくここで間違いないはずなんだけど…」

二人は階段を下りながら、辺りを見回した。建物は2階建てで、この2層についてはほぼくまなく調べ終えたはずなのだが…。

「やっぱり、場所が違うのかな」
「いいえ」

いつになく、キリカが強い口調で否定する。

「たぶんここです」
「何か思い出したのか!?」
「いえ、はっきりとは…。でも、なんだか見覚えがある気もするんです」

彼女がそういうのだから、間違いないのだろう。もとよりほかに宛てもない。今は彼女の微かな記憶だけが頼りなのだ。

と、一階へ降り立ったとき、ディオは何かに躓いた。

「っとと…何だ…?」

ディオがランプで足元を照らすと、床にわずかな隙間が空いていた。ディオがそこに手をかけると、木でできた床は持ち上がり、中から石の階段が姿を現した。

「なるほど、地下へ通じる隠し階段ってわけか。ありがちっちゃありがちだが、やっぱりこの館、ただの館じゃなさそうだな」

二人は覚悟を決めて地下へと降り始めた。ところどころ蜘蛛の巣がはっており、余計に薄気味悪い。おまけに地下なだけあって、地上部よりもひんやりと冷たい空気が溜まっていた。

地下は地上部よりも広さがあり、地上部とは打って変わって様々な機械や薬品などが通路や各部屋に散乱していた。ここなら、研究施設と呼ぶにふさわしい雰囲気はある。

ふと、とある部屋の前を通りかかったとき、キリカがディオを引き止めた。

「ディオさん…これを見てください」

ディオがキリカの視線の先を見ると、そこは独房であった。独房といってもそんなに立派なものではなく、部屋を鉄格子で区切っただけの簡易独房だ。だが、独房の中には人がいたと思われる痕跡が残っており、実際に使用されていたことがわかる。

「なんで研究施設に独房が…」
「被験者が逃げられないように…?」

キリカは体を震わせながら両手で自身を抱え込んで必死に抑えようとした。

「なんてひどい…」
「同感だ」

ディオはため息をついた。これじゃまるで、自分の幼い頃の扱いと変わらないじゃないか。親に見捨てられ、馬車に乗ってどこかへ運ばれたあの時と…。

二人はそれから独房を後にし、さらに奥へと進んだ。キリカはあの独房を見たきり、また黙り込んでしまった。何か考えるところがあるのだろう。もっとも、それはディオとて同じであった。だからこそ彼女の今の心境が痛いほどによくわかったし、ここで行なわれていたであろうことに憤慨を感じた。

やがて、二人はとある部屋にたどり着いた。この部屋は今までの部屋よりも二回りほど大きく、部屋の中央にはまるで手術室のように大きな台がおいてあり、その回りには数え切れないほどの機械の残骸が残っていた。

だが、二人はそれよりもまず匂いに気づいた。

「血の匂いだ…」

微かだが、間違いない。血の匂いが部屋に立ち込めている。ディオは注意しつつ部屋の中へと足を踏み入れ、辺りをランプで照らす。すると、壁際に部屋の灯りのスイッチと思われるものがあったので、ダメもとで押してみた。パッと部屋が明るくなり、部屋全体がその姿を二人の前にさらけだした。

その瞬間、キリカの悲鳴が聞こえた。

「キャアアアアア!!」

ディオは驚いてキリカのほうを振り返る。彼女は両手で顔を覆い、その場にしゃがみこんでいた。

「どうした、キリカ!?」
「ゆ…床…床に…」

彼は部屋の床に目をやり、思わず声をあげた。

「これは…!?」

その部屋の床は一面赤く汚れていたのである。完全に乾いており、かすれていたりしてかなり古いものであるのは間違いないが、紛れもなく血の跡であった。思わずディオは鼻と口を手で覆う。匂いの原因はこの一面の血の跡であろう。だが、なぜこれほどまでに血が飛び散っているのか。一体この部屋で、何が行なわれていたのであろうか。

ディオはとりあえずうずくまったままのキリカの元へ歩み寄り、彼女に声をかけた。

「大丈夫か、キリカ?」
「…え、ええ。なんとか」
「きつくなったら無理するなよ」
「もう、大丈夫です。」

キリカは立ち上がり、改めて部屋全体を見回す。本当は見たくもないのだろうが、彼女は必死にこらえていた。

「どうやらここが実験室だったのは間違いないみたいだな。なら、この部屋に何かあるかもしれない」

二人は手分けして部屋を捜索した。床には血の跡だけでなく、注射器の破片や何かの薬品の入っていたビンなども落ちていた。これらを見ても、ここで何かしらの実験が行なわれていたことは容易に推測できた。

と、その時ディオは部屋の隅にある引き出しから気になる書類を見つけた。

「こいつは…被験者リストだ」

別のところを探していたキリカも、彼の元へ駆け寄り、ファイルを覗き込む。ディオは最初のページからパラパラとめくっていった。被験者の顔写真と本人に関する様々なデータがそのリストには書き込まれていた。

「ほとんど子供ばかり…」

キリカは悲しそうに言った。ディオもリストを握る手に力が入る。

「くそっ…!!」

また昔の自分が思い出される。いつの時代も、子供は大人に都合のいいように利用されるだけだ。そんな思いを必死に隠しながら、彼はその後もリストを次々に見ていく。

ところが、途中一枚だけリストが抜けている部分があった。
No.13と書かれた被験者のデータのあとにはNo.15のデータが来ていて、No.14のデータはその後も一切出てこなかった。

「…おかしいな。なんでNo.14のデータだけないんだ?」

キリカは黙ったままだった。少し青ざめているようにも見えたので、ディオが再び彼女に声をかけようとしたその時、部屋の入り口の方でドカドカと音がした。

「!?」

ディオは入り口とキリカの間に立ち、剣を抜く。すると入り口の向こうから突然兵士達が部屋に入ってきて、二人を包囲した。そしてその後ろからあの男が姿を現す。

「ちっ…またあんたかよ、ヴェルナー!!」
「この間はうまく貴様らに逃げられたが、今回はそうはいかんぞ。出入り口はここだけだ」

ヴェルナーの言うとおり、この部屋から外に出る方法は他にありそうもなかった。元々地下なので窓もない。ディオはキリカをかばいつつ、少し後退する。彼女は不安そうな表情をしていた。

「無駄なあがきはよせ。お前達は既に包囲されている」
「うるせえ!!」
「ディオ=カルナス。お前も馬鹿ではないはずだ。ここは一つ、取引をしないか」

突如ヴェルナーがそう言い出した。

「取引…だと?」
「そうだ。もしお前がその女をこちらに素直に引き渡すというのなら、お前の罪を軽くしてやる。少なくとも、死刑は免れることができるだろう」
「へぇ、こないだとは随分とおっしゃってることが違うな、ヴェルナーさんよ」
「事情は変わったのだ。もう悠長にはしていられない。何しろ、ここは例の事件、つまりその女が…」
「黙れっ!!」

ディオが部屋中に響く声で叫ぶ。兵士達が一瞬たじろいだ。

「俺はな…あんたらのそういうやり方が気にくわねえんだよ!!」
「何も知らない貴様にそんなことをいう資格はあるまい」
「ならてめえは何か知ってるとでもいうのかよ!」

彼の問いかけに、ヴェルナーはしばらく黙っていた。だが、やがてゆっくりと口を開く。

「…無論だ。その女を生かしておくわけにはいかん」
「ふざけるな!!…俺は彼女を信じる!!てめえらなんかに売ったりはしない!!」
「ディオ…」

後ろでマリーが心配そうに二人のやりとりを聞いていた。すると、ヴェルナーは急に口調を変え、恐ろしく低い声で言った。

「…貴様には何を言っても無駄なようだな。ならば、貴様もまとめて始末してくれる」
「くっ…」

兵士達が武器を構えて二人に少しずつ近づく。二人は段々と中央の実験台のほうに追い詰められた。

(くそっ…数が多すぎる)

ディオが焦りを覚え始めたとき、キリカは台の影から何かが落ちる気配を感じた。
彼女の足元に、一枚の紙切れが落ちていた。それに目を落とした彼女は完全に言葉を失い、唖然とした。

そこに書かれていたのは、さっき見つけたリストから抜け落ちていたNo.14の被験者のデータだった。そしてそこに貼られていた写真、今よりも多少幼さが残っているが、それは紛れもなく彼女自身のものだった。

キリカは恐る恐るデータの欄に目を移す。何かの実験結果と思われる数値や記号がびっしりと書き込まれていたが、その上、被験者の名前の欄。そこに彼女は目をとめた。

『Sincia=Hartyrie(シンシア=ハーティリー)』

そう書かれていた。
その名前を見た瞬間、彼女の脳裏に幼い頃の記憶がすべて蘇る。

「思いだした…私は…」

ディオはまだ彼女の異変に気づいていなかった。

「あ…あ…」

彼女は両手で頭を抱え、体をガタガタと震わせ始める。その時になってようやくディオが背後の彼女の様子がおかしいことに気づいた。

「キリカ…?」

見ると、彼女は先ほどよりも顔が青ざめており、まるで幽霊でも見たかのような怯えきった表情をしていた。

「キリカ?…キリカ!?」

彼が震える彼女の肩に手をやり、必死に声をかける。突然の行動に驚いたのか兵士達は立ち止まったまま動かない。ヴェルナーもキリカの異変に気づいた。

「あの女…まさか…!?」

その時、キリカが急に苦しみだした。

「あ…ああ…あうぅ…!?」

血の跡が残る床に両膝を着き、頭を抱えて激しく体を揺らしている。そんな彼女の様子に、ディオはこれまでにないほどの不安を感じた。

「しっかりしろ、キリカ!?具合が悪いのか!?」
「…ないで」
「え…?」
「出てこないで…お願い…だから…」

今度は両手を胸にやり、必死に押さえつけた。彼女の体はいまや汗で濡れており、顔は苦痛でゆがんでいた。

「キリカ…」
「ディオさん…お願い…逃げて…」
「何いってんだ!!何があっても最後まで信じるって約束したじゃないか!!」
「お願い…ううぅ…あ、ああ…」

あまりの苦痛からか、彼女は自らの肩を爪が食い込むくらい強くつかむ。そして彼女の服が肩の部分から破けた。刻印が刻まれている左肩が露になる。それを見てディオは思わず声を漏らした。

「刻印が…光ってる…!?」

微かにだが、刻印が赤黒く光っていた。その光は神々しいというよりはむしろ邪気に満ちていた。そうこうしているうちにも、彼女の苦しみはますます増していく。

「お願いしま…す…逃げてください…」
「キリカ、しっかりしろ!!俺がそばについててやる!!」

ディオが必死に呼びかける。だがそれも虚しく、ついに彼女は限界に達してしまった。

「あ…あ…あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

館中に響くほどの声で彼女は叫んだ。そしてそれっきり、うつむいて何も言わなくなった。彼女の体の中で何が起こったのか、ディオには全くわからなかった。

「キリカ…?」

ディオは彼女の体を軽くゆする。だが、彼女の反応はない。二人を取り囲んでいた兵士達も、突然の出来事にただ戸惑いを見せるだけだった。

そんな中で、ヴェルナーだけが真実を悟ったかのように、小さくつぶやいた。

「まさか…『奴』が覚醒したのか…?」

彼の表情にはさっきまでとは異なり、恐怖に満ちていた。戦慄のあまり、体が少し震えている。そんなヴェルナーには目もくれず、ディオはただ呼びかけ続けた。

「キリカ!! 目ぇ開けろ!! 一体どうしちまったんだ!!」

彼の必死の呼びかけにしばらくして『彼女』が反応した。

「キリカ…」

ディオは少しだけ安心した。だが、その安心はすぐに消え去ることとなった。

「フフ…」

彼女から気味の悪い笑い声がする。だがそれは彼女の声ではない。誰か別の、しかしやはり女性の声であった。

「やっと…表に出てこれたわね」

ディオはその言葉を聞くと、瞬時に彼女から距離をとり、剣を構えた。うずくまっていたキリカ、いや彼女の体が起き上がり、そしてディオや兵士達のほうを振り返る。その姿は紛れもなくキリカの体なのだが、まるで別人のように見えた。

彼女の中で、目覚めてはいけない何かが目覚めてしまった。それが何かはわからないが、その場にいる誰もが直感的にそう感じた。

(第9話に続く)





FC2ブログランキング参加中!!刻印の封印は解かれ、いよいよ彼女の中で何かが目覚めた!!次回、その正体が明らかに!!続きが気になる人は押してくれると嬉しいです。
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