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RO.S.S 『Dark Cage』 第7話
2006/10/30(Mon)
RO.S.S『Dark Cage』の第7話です。これでちょうど折り返しといったところでしょうか。


これまでの話を読んでない方はこちらからどうぞ。



Dark Cage タイトルロゴ


RO.S.S 『Dark Cage』 第7話:刻印を知る者


カタン…カタン…
馬の足音と荷車の走る音だけが静寂の中に響き渡る。
荷車に乗せられた子供達には皆生気がなかった。ただ一人、彼を除いては。
彼はふと目の前に座っている少女の方を見る。自分とはほとんど年が変わらないであろうその少女も、やはり他の子供達と同様な表情をしていた。

一瞬少女と目があう。彼女はひっそりと泣きながら、まるで何かを求めるような眼差しで彼を見つめていた。

だが、今の彼にはできることはなく、逃げるように彼女から目をそらした。






キリカがうっすらと目を開けると、木の天井が映った。

(…?)

ゆっくりと起き上がり辺りを見回すと、どうもどこかの部屋の中らしい。
なんだか軽い頭痛がする。彼女は頭をおさえながら、何があったのかを思い出そうとする。たしか、山の中で…

と、その時ドアの向こうで声がした。

「だから、知らねぇっつってんだろ」

男の声だ。誰かと会話しているらしい。その口調は少し荒々しくて、面倒くさそうだった。キリカはベッドから出てそっとドアに近づき、音をたてないように気をつけながらほんの少しドアを開ける。わずかな隙間からドアの向こうを覗くと、白衣を着た男が玄関の所に立っていた。

そして、その向こう側には…

(…!!)

白衣の男の影から、軍服姿の男が二人見える。おそらく、プロンテラ軍兵士だろう。

「この付近に脱獄犯とその共犯者が潜伏している可能性があるという情報が入っています。何か心当たりはありませんか?」

兵士の声はキリカにも届いていた。おそらく彼らのいう脱獄犯と共犯者というのはキリカたちのことに違いない。キリカはうろたえた。

だが、白衣の男は相変わらずの調子で答えた。

「悪いが、全くないね。大体ここは診療所だ。寝てる患者もいる。もう少し静かにしてくれ」
「これは失礼しました。では、もし見かけたらご連絡ください」
「わかったわかった。わかったからさっさと帰ってくれ」

そういうなり、男は兵士達を無理やり追い返し、ドアを閉めた。

「ったく…これだから軍の連中は…」

頭とかきながら男が振り返る。キリカはどうしたらいいのかわからなかった。だが、そこへ男の声が飛んでくる。

「…隠れなくてもいい。もう軍の連中は追っ払ったからな」

一瞬びくっとして彼女はたじろいだが、少なくともこの男は敵ではないと感じたのか、キリカは自らドアを完全にあけて男の方へと進み出た。

「目ぇ覚めたか?」
「あ…はい。あの…ここは…?」

気になっていたことを尋ねると、男はポケットからタバコを取り出しつつ答えた。

「…俺の診療所。アルデバランの街外れのな」

まだ30歳くらいだろう。眼鏡に無精ひげと、至ってそこらにいそうな男だったが、診療所ということはこの男は医者なのだろうか。

男の言葉を聞いて、彼女はようやく自分が置かれている現状と、何が起こったのかを思い出した。そうだ、私達はアルデバランを目指して山を越えていたのだ。でも、途中で意識がなくなって、かすかにディオさんの呼びかける声が聞こえて…でも、どうやってこの街に…?

と、その時キッチンのほうからこちらはまだ20歳にも満たないであろう少女が現れた。

「センセー、ここでタバコはダメですよ!!」

両手にはフライパンとヘラを持っており、エプロン姿な彼女は、どう見ても料理の途中で出てきたといった感じに見えた。

「今日は朝から軍の連中の相手して気分が悪ぃんだ。一本くらい吸わせろ」
「もう、何かあるとすぐそう言うんだから。大体患者さんの健康を気遣う立場のセンセーがタバコなんか吸ってどうすんですか」
「そのセリフも聞き飽きたぞ。タバコは俺のポリシーみたいなもんだ」
「どんなポリシーなんだか」

男はタバコを口に加え、火をつける。少女は諦めたのか、肩でため息をつきながら、キリカに一礼して戻っていった。

「病み上がりのお前さんにゃ悪いが、一本だけ吸わせてくれ」
「あ…お気になさらず、どうぞ」

キリカは慌ててそう言った。タバコをふかしながら、男は彼女に尋ねる。

「お前さんの名前は?…おっと、そういや俺もまだ名前を言ってなかったな」

男は胸ポケットから名刺を取り出す。そしてそれを一枚、彼女に渡した。

「ラルフ、ラルフ=ウォルターだ。この街で開業医をやってる」
「私は…キリカ=エルファンディアです」

キリカも自分の名を名乗る。ラルフは軽く頷いた。

「それにしても驚いたよ。薬草取りに南の山の麓へいったら、お前さん達が倒れてたんだからな」
「え…?」
「お前さんの方はひどい熱だった。まぁ、ただの風邪だったみたいだが」
「そうですか…。そういえば、たしか山を越える途中でなんだかめまいがして…でもどうやってここまでこれたのかしら…?」
「おそらく、もう一人の方がお前さんをかついで山を越えたんだろう。体中すり傷や切り傷だらけだったしな。まぁ、そっちの方もクレアの魔術治療で治したが」

「クレア…?」

ラルフはキッチンのほうを指差しながら答えた。

「ああ、さっきの女の子だ。言っとくが、俺の子供じゃないぞ。わけあって、俺が面倒みてる。今は聖職者の修行中でな」

あのエプロン姿の女の子のことだろう。だが、今はそのことよりももっと気になることがあった。

「…そういえば、ディオさん、いえ、もう一人の男の方は!?」
「心配すんな。今は寝てる。見つけたときは足と腕に切り傷と噛み傷を負ってたが、そっちももう治療してある。」
「そう…ですか。よかった…」

キリカは少し安心した。だが、その噛み傷のほうは自分が原因でおわせてしまったものであることを考えると、複雑な心境だった。

だが、彼女には他にまだ心配なことがある。

「あの…」
「ん?」

タバコを吸い終わり、吸がらを灰皿に置いたラルフが振り返る。

「聞かないんですか…?私達のこと…」
「聞いて欲しいのか?」
「それは…その…」

キリカが口ごもっていると、ラルフは少し声のトーンを落としてさらに続けた。

「お前さんたちが何者かはもう知ってる。お前さんの肩に刻まれた刻印のこともな」
「!?」

自分の体に刻まれた刻印に手をあてるキリカに対し、ラルフは慌てて付け加えた。

「おいおい、勘違いすんな。だからって別に俺は何もしちゃいねえよ。それに、お前達を軍に売るつもりもない。さっき聞いてたならわかるだろうが、俺は軍が嫌いでね」

キリカはそれを聞いてとりあえず手を下ろした。

「俺がその刻印のことを知ってるのは、ちょいと昔に…な」
「そうなんですか…」
「まあ、とにかく、お前さんもまだ疲れてるだろう。体調が戻るまではゆっくりするといい」

ラルフはクレアを呼んでコーヒーをいれさせた。





その後、目を覚ましたディオと共に、キリカはラルフの家で夕食をとった。

診療所に入院している患者を除けば、この診療所に住んでいるのはラルフとクレアの二人だけだった。ラルフの話によれば、二人は親子ではないということだが…。では、なぜクレアはラルフと共に住んでいるのであろうか。何かわけありのようだったが、なんだかそれを聞くのも悪い気がして、二人はその話題には触れないようにした。

夕食後、二人はこれまでの経緯をラルフに説明した。

「…なるほど。それで城の地下牢から脱獄してここまでやってきたというわけか」
「ええ。正直、今ここにいられるのは先生のおかげです」

ディオは素直に礼を述べたが、ラルフは首を振った。

「俺は別に何もしちゃいないさ。それより、これからどうする気だ…?」
「はっきりとはわかりません…。ですが、彼女の育て親がなくなる間際に、この街の名前を口にしたそうです。だから、おそらくこの街に何か手がかりがあるんじゃないかと思って…」
「なるほどな。だが…」

ラルフの表情が厳しくなる。

「俺はお前達のやることに反対はしないし、さっきもいったように軍の連中に売ったりするつもりもない。だが、お前達がやろうとしていることはかなり危険なことだ」
「どうしてです?」
「説明は難しいんだがな。俺が知っていることはわずかなことだけだが、その刻印、それは魔術によるものだ。それもただの魔術じゃない」

二人は顔を見合わせる。そしてラルフの言葉の続きを黙って待った。

「魔術と科学が組み合わさって作られた新しい魔術だ。それゆえに、詳細についてはまだ解明されていない。その刻印を扱うとき、何が起きるか想像がつかないんだ」
「でも、なんでそんな刻印がキリカの体に…」
「それもわからん。だが、少なくとも6年前のあの事件に何か関係があるのは間違いないだろう」

キリカが城へ連行される原因となった、例の事件。何人もの人間が斬殺されたということだが、その現場でキリカが目撃されている。だが、キリカにはその時の記憶が全く残っていない。

「これはあくまでも想像だが、お前さんがその事件に何か関わっていたのは間違いないだろう。なぜその場にいたのか、それは俺にもわからんが、現場となったのは古い研究施設だと聞いている。もしかしたら…」
「…」

その先は二人もあまり聞きたくはなかった。研究施設にまだ幼い子供であったキリカがいる理由など限られている。研究員の家族か、あるいは…。

「実験体…」

キリカ自身が小さくつぶやく。ラルフは黙って頷いた。

「実験体だなんて…人をなんだと思ってやがるんだ!!」

テーブルをディオが強く叩きつける。だが、それをラルフが制した。

「まだ推測の域をでない。それに、今はそのことでどうこう言っても仕方ないだろう」
「それはそうですけど…でも、なんでキリカが…」

ディオは歯を食いしばった。子供はいつも大人にいいように利用される。彼自身の過去がそうであったように。

「とにかく、だ。どちらにせよ、もしお前さんが真実を知ったとき、お前さんにとってはあまりよくない結果になる可能性もあるということだ。それでもいくのか…?」

ラルフは二人を、特にキリカにじっと視線を合わせた。クレアも真剣な表情で彼女を見つめている。

キリカは正直なところ、迷っていた。確かに真実を知るために城を出たことにはいまさら後悔はしていないが、もし真実を知ったとき、果たして本当に自分はその過去を受け入れることができるのだろうか。

だが、しばらくして、キリカははっきりとした口調で答えた。

「…たとえどんな罪を犯していたとしても…私は自分の過去を知りたいです」
「そうか。…ディオ、お前はどうなんだ」
「俺は…」

ディオは迷わず答える。

「俺は、彼女を信じます。それが俺の信じた道ですから」
「…そうか」

ラルフはそれを聞くと立ち上がり、棚から何かを取り出して戻ってきた。机の上にそれを広げる。

「これはこの街の付近の地図だ。今いるのがここ。俺の診療所だな」

街の南西の角付近を指してラルフは続けた。

「6年前の例の事件、あれが起きたのがこの辺りだと聞いている」

今度は街を出て東にある程度進んだ地点を指差す。そこは森の中だった。

「俺も詳しい場所まではわからんが、ここにその研究施設があるらしい。あの事件の調査以来、誰も近寄ってないはずだ」
「じゃあ、ここにいけば…」
「確実とはいえないが、何かしら手がかりがあるかもしれん。お前達がそこまで強い意志を持ってるなら、行ってみるといい」
「ありがとうございます、先生!」

二人はラルフに礼を言った。だが、ラルフは慌てて付け加える。

「おっと、今すぐに出発するとかいうなよ。もう夜だし、街の各入り口はキッチリ軍の連中が網はってやがる。それに、お前さん達まだ体力が回復してないだろう」

一度は腰をあげた二人もそれを聞いて再び椅子に座り込む。だが、ラルフは二人を励ますように言った。

「なあに、入り口を通らずに街から出る方法はある。とにかく今日一日、ゆっくり疲れを取るんだ」
「はい」
「よし、なら今日はもう寝ろ。クレア、二人を部屋に案内してやってくれ」
「了解。さぁ、こちらへどうぞ」

クレアは二人を連れて二階へとあがっていく。ラルフはそれを見送ると、窓の外を眺めながらまたタバコを一本取り出し、火をつけた。

ゆっくりと煙をふきながら、ラルフは小さくつぶやいた。

「刻印…か」

街は完全に闇に包まれていく。

(昔のことを思い出すとは、らしくねえな)

ラルフは目を閉じて、ただ黙ってタバコを吸い続けた。





翌日二人が目を覚まし、下階へおりてくるとラルフが出迎えた。

「よぅ、よく眠れたか?」
「おかげさまで、すっかりよくなりました」
「そうか、まあ、とにかく座れ。今朝飯を作ってやる」

そういうとラルフはキッチンのほうへと向かった。そしてしばらくして、スープとパンを運んできた。

「ほれ。質素に見えるが、味は保証するぞ」
「いただきます」

二人は運ばれてきたスープを口に運ぶ。温かくて、味もかなりよい。

「これ、先生が作ったんですか?」
「ん?ああ、まあな」
「あれ、そういえばクレアさんは?昨日はクレアさんが料理をしていたように見えましたけど」

キリカは、クレアがいないことに気づいた。すると、ラルフが自分もパンをくわえながら答える。

「あぁ、あいふならひょいほようひをたのんは」
「用事…?」
「ま、いずれわかるさ。とにかく今は食え食え。おかわりもあるぞ」

そうこうしてるうちに3人は食事を済ませ、ディオとキリカは荷物をまとめに一度二階へ戻る。そして再び下へ戻ってくると、クレアが帰ってきていた。

「あら、お二人ともおはようございます」

クレアは二人に気づくと挨拶をした。二人もそれに返す。

「おお、きたか。準備はできてるか?」
「ええ。ホントにお世話になりました」

二人は今度はラルフに軽く会釈した。

「なあに、俺はただ怪我人と病人の手当てをしただけだ。それが本業だからな。それより、準備ができてるなら早速お前達を送るぞ」
「送るって、どうやって?」
「クレアに頼む。実は今朝、クレアには街の東側の入り口から少し離れたところでポータルの転送位置を記録してきてもらった。ここから直接、お前達をポータルでそこまで送り届ける」
「なるほど、昨日言ってたのはこのことだったんですね」
「そういうことだ。クレア、頼んだぞ」
「はい、センセー」

そういうとクレアはなにやら詠唱を始めた。その間に、ラルフは最後の確認をする。

「いいか、二人とも。この先は何が起こるかわからん。気を引き締めていけよ」
「はい!」
「それと、何かあったら遠慮なくここを訪れてくれたらいい」

二人は大きく頷いた。そのとき、クレアが詠唱を終えた。

「ワープポータルッ!!」

彼女の声が響いたかと思うと、地面に城でハルエラが見せたような魔法陣が描かれ、光の柱が中心から高く伸び上がった。

ポータルに入る前、二人はラルフやクレアのほうを振り返る。

「ありがとうございました!」
「おう、気をつけていってこい」

ラルフの言葉をきっちりと聞き終えて、二人は光の中に進んでいった。そして光の柱が消えたときには二人の姿はそこにはもうなかった。

それを確認した後、クレアがラルフに尋ねる。

「センセー、本当に行かせてよかったんですか?」

彼女の問いかけに、ラルフはしばらく黙っていた。

「どのみち俺がどうこう言えるような立場じゃないさ。それに、あいつらならどうにかするだろ」

ラルフはそれだけいうとタバコを取り出した。それを見て、クレアは怪訝そうな表情になった。


(第8話に続く)





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