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亡人の雨 前編
2006/03/13(Mon)
今回はとあるモンスターの誕生と、それにまつわる二人の騎士についてのお話。原作とは一切関係なく、もちろんフィクションです。


興味のない方はスルーで。ちなみにタイトルの読み方は「なきびとのあめ」と読みます。


亡人の雨 前編

『ねぇ、知ってる?例の化け物の話』
『聞いた聞いた。もう何人も被害にあってるんでしょ?』
『怖いよねぇ』
『街のほうまでこなきゃいいけど...』






「…化け物退治、ですか」

先日騎士団に入団したばかりのイスラ=ハリットは目の前に座っている女騎士の言葉を聞いてあっけに取られた。

「正確には調査といったほうがいいかしら、イスラ君」

彼の上司であり、彼の所属する隊の小隊長でもあるミリア=ヴァンダムは報告書から彼のほうに目線を移しながら続けた。相変わらず、この人の部屋はタバコくさいなぁなどと思いつつ、イスラも彼女の話に耳を傾ける。

「あなたも噂くらいは聞いたことがあるでしょう?」
「例のやつでしょ?そりゃあ多少は知ってますよ。ここ1週間で正体不明の化け物に襲われて被害を受けた冒険者が十数人、そのうち二人は傷が深くて今も入院中。」
「被害を受けた冒険者の中には、噂を聞きつけて退治に向かった手練もいたそうだけど、それもみんな返り討ち。まだ死者が出ていないのが不幸中の幸いってとこかしら。あー怖い怖い」

どう聞いても怖がってるようには聞こえない言い方だったが、イスラはあえて何もいわずに黙って話を聞いていた。

ミリアが話しているのは、一週間前から現れた謎の怪物のことである。小さな街の外れで、冒険者や街の人間が次々と襲われ、プロンテラでもその話題で持ちきりだった。

「まぁ、そういうわけで騎士団のほうにも調査依頼がきてるのよ。んで、上からの命令で私と君がその調査にいくことになったってわけ」
「はぁ…」
「気の抜けた返事ね。やる気あるの?」

ミリアに睨まれて、イスラはあわてて姿勢を正す。

「そ、それはもちろん!ですが…」

イスラは何となく腑に落ちなかった。

「その…なぜ俺が選ばれたんですか?」
「なぜって?」
「だって、俺はまだ騎士団に入団して2週間の新米ですよ?それなのにそんな危ない化け物退治に同行だなんて…」

と、そこでイスラの頭をミリアが報告書の入ったファイルで叩いた。

「いでっ!」
「人の話聞いてた?退治じゃなくて、あくまでも調査よ、調査。大体、手練の冒険者でもかなわないような相手を君に任せられるわけないでしょ。」
「そ、それは…。でも、それならもっと人手を…」
「騎士団もそんなに人数さけるほど余裕があるわけじゃないのよ」
「そう…なんですか」
「まぁ、もし戦うことになったら、君は私の支援に徹すればいいわ。基本的にあなたは荷物もちよ」
「…はい」

実際、ミリアの腕は騎士団の中でも高い。彼女に比べれば、イスラはまさに赤ん坊同然だ。

「私だってこんな依頼うけたかないけど、任務として命ぜられた以上いかないわけにもいかないでしょう」

ミリアは報告書を机の上に置き、立ち上がった。

「とにかく、明朝5時に出発。それまでに準備をすませておきなさい。寝坊なんてしたら承知しないわよ」
「はっ!」

イスラは彼女に敬礼をして、部屋を出た。ミリアの荷物を背負ってヒィヒィいいながら歩いている自分の姿が今から想像できて、イスラはため息をついた。

翌日明朝、ミリアとイスラはプロンテラを発った。イスラの予想通り、彼はミリアの分も含め、二人分の荷物を背負って先にいくミリアを追って歩くことになった。

「あの~、ミリア隊長。少し休憩しませんか」

2時間ほど歩いたあと、既にヘトヘトになったイスラが前をいくミリアの背中に呼びかける。
あたりはもう明るくなり始めており、鳥の鳴き声が近くの木々の上で聞こえる。

「何言ってんの。まだ2時間しかたってないじゃない」
「それはそうですけど…」
「あと2時間は我慢して歩きなさい。今日中には街に着かなきゃいけないんだから」

ミリアは振り向きもせずにしれっと言った。イスラは仕方なくそのまま歩き続ける。
彼らが目指しているのはプロンテラから遥か遠く離れた場所だ。プロンテラから術士の協力で途中の街まで空間転送してもらい、そこからは徒歩での移動となる。歩き続ければ一日でなんとか目的地にはたどり着けるだろう。

(それにしても…)

イスラは歩きながら噂の怪物について考えていた。

(腕のたつ冒険者もやられるような化け物か…どんな奴なのやら)

ミッドガルドでは未知の世界を夢見てたくさんの冒険者たちが日々モンスターと戦っているが、日に日にそのモンスターたちが凶暴化しているという話はイスラも今までによく聞いていた。だが、今回の件はそんな比ではない相手のようだ。そう考えると少し寒気がした。

(まぁ、戦うのは俺じゃないけどさ)

あくまでも彼の役目はミリアの援護だ。それ以前に、ちゃんと怪物に出くわすかどうかもわからない。あまり深く考えないでおこう、彼はそう思い、荷物を背負いなおした。





 二人が目的地の近くの街に到着したのは日没まであと一時間と迫った頃だった。空は既に青から赤へと変わりつつあり、地面に映った二人の影も大分長くなっていた。
宿屋の前までくると、ミリアは疲れて座り込んでいるイスラを振り返り言った。

「それじゃ、私はこの街の市長のところに到着の報告にいくから、君は先に宿に入っておきなさい」
「到着の報告ですか」
「騎士団に調査の依頼を持ってきたのはここの市長なのよ。挨拶しないわけにもいかないでしょ。まぁ、一日歩いて疲れてるみたいだし、少し休んでなさい。」
「はっ!」

ミリアの後ろ姿に敬礼をして見送るイスラ。そして彼女の姿が見えなくなったところで、荷物を抱えあげて宿屋に入る。
ひなびた宿屋だが、カウンターに座っている女将は妙に明るかった。

「いらっしゃい!お兄さん、泊まりかい?」
「え?あ、はい、二人お願いします」

あまりの勢いにイスラは少し戸惑った。女将は嬉しそうにイスラの荷物を預かる。

「よくきたね。まともな客は久々だから、ほんとありがたいかぎりさ」
「え、他にお客さんいないんですか?」
「あんた、知ってるかい?ここ一週間ほど、この街の近くに化け物がでてるんだよ」
「ああ、俺たち、その化け物の調査でプロンテラ騎士団から来たんです」

イスラがそういうと、女将はいぶかしげにイスラのほうを見た。

「あんたが?ほんとに?なんだかあんまり強そうに見えないねぇ…」
「は、はは…よくそう言われます」

実際イスラは新米の兵士で、まだそれほど腕がたつわけではないが、この場合本当のことをいって相手を不安にさせるのもまずい気がして、あえて伏せておいた。

「まあ、その化け物のせいで観光客は全然よりつかなくなっちまってねぇ。たまにその化け物を退治してやるとかいって冒険者がくるけど、帰ってきたときにはみんな傷だらけさね」
「その化け物なんですけど、どんな姿をしているのかわかりますか?」

イスラの質問に女将は首を横に振った。

「いいや、詳しくはわからないねぇ。でも、今までに見たことのないモンスターらしいよ」
「新しいモンスター…か」

もしそれが本当なら、やはりこの世界では何か異変が起きているのだろうか。ミッドガルドの国王であるトリスタン3世は今その解明を急がせているというが…。世界の終末、神々の黄昏とも言われるラグナロク…その前兆が見えているということなのか。

「さぁさぁ、とにかく部屋へ案内するから、ゆっくりしてっておくれよ」

女将の先導に従い、イスラは部屋へ案内された。ミリアの荷物もとりあえず一度まとめてイスラの部屋に運ばれた。そして女将が部屋を出て行ったあと、彼はベッドに仰向けになり、一日の旅の疲れを癒した。




ミリアが部屋にやってきたのはそれからまもなくだった。

「ただいま。ふぅ、挨拶も楽なもんじゃないわね」
「…ほぇ?」

うつらうつらとしていたイスラの気持ちのよいひと時はあっという間に終わった。

「だらしないわね…明日、例の化け物が出たっていう場所までいくわよ」
「は、はい!」

完全に目が覚めたイスラは慌ててベッドから飛び起き、そして服装を正した。外はもう闇が街全体を包み始めている。外灯にちょうど明かりが灯された。

「市長の話だと、ここから東のほうに少し歩いたところらしいわ。途中洞窟も通るから、持ってきたランプも用意しといて。」
「了解」

イスラはかばんの中から大きなランプを二つ取り出した。その後ろで、ミリアは自分のカバンをごそごそとあさりだした。

「夕食までまだ時間はあるかしら」
「え?あぁ、あと30分ほどでできるってさっき…」
「よろしい、それじゃ、出てって」
「…へ?」

突然部屋を出ていくように言われて、イスラはポカンとなった。

「君ねぇ、少しは気を使いなさい。一日歩いて汗かいたら、レディはシャワーでも浴びたくなるでしょ?」
「でも、ここ俺の部屋…」
「私の部屋のシャワー、調子悪いみたいなの。さあ、でてったでてった」

反論する間もなく、イスラは部屋から閉め出された。廊下では従業員らしき人がイスラのほうをみてクスクスと笑っている。がっくりとうなだれた。

仕方がないので、イスラは先に食堂へ行くことにした。その途中、カウンターの前を通ると女将さんに呼び止められた。

「ああ、あんた。明日調査にいくんだろ?朝から雨になるらしいよ」
「え、そうなんですか。まいったなぁ…」

あとでミリアに言って調査の予定を延ばそうかとも考えたが、すぐにやめた。どうせあのミリアのことだから、「雨くらい我慢しなさい」というに違いない。





その後ミリアもやってきて、二人で夕食をすませ、部屋へと戻った。寝る時間にはまだはやいが、明日のことを考えるとできる限り体を休めておいたほうがいいだろうと思い、イスラは自分のベッドにもぐりこむ。

しかし、その直後にドアをノックする音が聞こえた。

「イスラ君、ちょっといいかしら?」
「はい、どうぞ」

あわてて飛び起き、イスラは服装を正す。ドアからあらわしたミリアの姿はいつもの兵装ではなく、私服であった。さすがに寝巻きというわけではなさそうだが。

「ど、どうしたんですか」
「別に」

自分から尋ねてきておいて「別に」はないだろ、とイスラが思っていたら、ミリアは抱えていたシャンパンを見せる。

「ちょっと一杯付き合いなさい」
「さ、酒ですか!?今はまだ任務中ですよ…?」
「シャンパン一本程度で酔っ払うほど、私も君も弱くないでしょ。とにかく、入るわよ」

ミリアは部屋のドアを閉め、テーブルにシャンパンをおいて座った。イスラは部屋に備え付けてある棚からグラスを2つ取り出してきて、ミリアの向かい側に座った。ミリアはシャンパンの口をあけ、グラスにトクトクとついでいく。

「ああ、悪いけど、灰皿取ってきてくれる?」
「わかりました」

イスラはベッドの横の灰皿を取りにいった。

それを見計らって、ミリアは胸ポケットから薬包紙を取り出した。そして包んであった粉を片方のグラスにまぜる。そしてイスラが戻ってくる前に、再び薬包紙を胸ポケットにしまいこんだ。

戻ってきたイスラは灰皿を彼女に差し出した。

「ありがとう。じゃ、これ」

ミリアは粉を混ぜたグラスをイスラに差し出した。

「調査の成功を祝って、乾杯」

二人はグラスをお互いカチンとあわせて、シャンパンを味わう。こうしてみると、ミリアにはなんとなくシャンパンが似合うなと思いながら、イスラも自分の分を飲み干した。
ミリアはシャンパンを飲み干したあと、タバコを取り出して火をつけ、吸い始める。

「君はタバコは嫌いかしら?」
「好き…ではないですね」
「でしょうね。顔を見ればわかるわ」

そんなにあからさまに嫌そうな表情をしていたのだろうかと思って、イスラは慌てた。

するとミリアはタバコをつぶして灰皿に入れ、立ち上がった。

「それじゃ、今日はそろそろ休むわ」
「はい」

それだけいうと、ミリアは部屋を出ていった。イスラもグラスを片付ける。

だが、その途中、突然イスラの視界が揺れた。

(あれ…?)

なんだか体がだるい。疲れたのだろうか。
とりあえずイスラは何とかグラスを片付けおえた。しかし、視界の揺れは一層激しくなるばかりだった。

そして、彼はそのままベッドの上へと倒れこんだ。
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