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RO.S.S 『Dark Cage』 第2話
2006/09/24(Sun)
さて、現在連載中のRO.S.S『Dark Cage』の第2話掲載です。


なお、第1話をまだ読んでいない方はそちらから先に読まれることをお勧めします。


それにともない、これまでのまとめ(リンク)および登場人物紹介の記事を別に作成しました。こちらから最新話以外の物語を読むことができます。


RO.S.S『Dark Cage』 まとめリンク&登場人物紹介




さて、それではRO.S.S『Dark Cage』第2話をお楽しみください。


Dark Cage タイトルロゴ


RO.S.S 『Dark Cage』 第2話:亡くした記憶、罪の証

少女の目の前でたくさんの血が流れる。
彼女の周りにいた人々が次々に倒れていく。彼女自身、今目の前で何が起きているのか、ここがどこなのかもわからない。やがて、周りの人間がすべて地に伏した。彼女を除いたすべての人間が。

そして彼女は自分の手に視線を落とした。

彼女の手は真紅の血で染まっていた。





ろうそくの明かりのみで照らされた階段を、ディオはゆっくりと降りた。階段はプロンテラ城の地下牢へと続いている。一週間前にやってきた『魔女』を、ディオはまだ一度も直接見たことがない。ハルエラの話だと、6年前に十数人もの人間を殺害したということだが…。

牢のある部屋の前には当直の兵士が立っていた。ディオは敬礼して交代の旨を告げる。兵士は自らも敬礼し、上の階へとあがっていった。
ディオは牢のほうに目をやる。王の命令で、今この区画には彼女以外の囚人はいないとのことだった。いくつかある牢の一番奥に、彼女がいた。

つややかな黒髪のロングヘアーで、肌は白く、どことなく気品がある。だが、彼女の表情は暗く、ずっとうつむいたまま、虚ろな瞳をしていた。

(あれが魔女か…)

ハルエラが言っていた通り、見た目はとても人を殺すような女性には見えなかった。

ディオは牢の前までいく。近づいてきたディオに彼女が視線を向けることはなく、やはりうつむいたままだ。所定の立ち位置についてディオは見張りを始めるが、なんだか非常に気まずかった。薄暗い地下牢にいるのは彼女とディオの二人のみで、外からもほとんど音は漏れてこない。不気味なほどの静寂が二人を包んでいた。

「さ、寒くないか?」

あまりにも気まずくて、ディオは何とか声を搾り出して彼女に訊いた。

(何言ってんだ、俺…)

言ってから少し後悔したディオに対して、彼女の反応は少し意外なものだった。彼の声にハッと振り向いて、キョトンとしている。間近でみるとやはりきれいな女性だった。

「あ…いや、その…」

彼女に見つめられて、ディオはどう言ったらいいのかわからなくなった。

「気を遣ってくださって、ありがとうございます」

透きとおるような声で彼女が答える。ディオはその言葉を聞いて少し落ち着くことができた。
だが、彼女はまたすぐに暗い表情に戻る。そして再びうつむいて、小さな声で続けた。

「でも…私にはあまり関わらない方がいいです」
「え…?」

困惑するディオに、彼女は自分の両手の掌を見て、そのまま目を閉じた。

「私は呪われているんです」
「呪われて…?」

ハルエラが言っていた彼女の罪についてディオは思い出した。十数人もの人間の殺害。その罪が問われて、今彼女はここにいるのだ。彼女が言っているのはこのことなのだろうか。

「あんたは…ほんとに十数人もの人を殺したのか?」

ディオは思いきって訊いてみた。本来一兵士が勝手に囚人と会話することは禁じられているのだが、ディオはどうしても彼女と話をしてみたかった。彼女がなるべく話しやすいように、武器を壁にたてかけ、牢の檻ごしに彼女の前に座って目線をそろえる。

「…」

彼女はなかなか答えない。ディオは優しい声でさらに続ける。

「俺には、あんたが人を殺すようにはとても…」
「わからないんです」

彼の言葉を彼女が遮った。

「わからないって…どういうことなんだ?自分が殺したかどうかもわからないってことか?」
「違うんです!」
突然強い口調で否定する彼女。閉じていた瞳はいつの間にか開いていたが、彼女は少し涙ぐんでいた。

「私には…6年前のあの時より前の記憶がないんです」
「まさか…記憶喪失ってやつか!?」
「はい。もうあなたも聞いていると思いますが、私は6年前に大きな罪を犯したことを問われてここにつれてこられました。ですが私自身、自分がどこで誰を殺したのか、あるいは本当に殺したのかどうかすら憶えてないんです」

彼女は唇を噛んで必死に涙をこらえていた。

「6年前のあの日、私は気づいたら森の中で倒れていました。眠っている間にずっと雨にうたれていたせいか、ひどく熱が出ていました。私を助けてくれて、ここまで育ててくれた人に後で聞いたら、そのときの私は全身血で汚れていたそうです」
「でも、それだけでホントにあんたが殺したとは…」

そこまで言って、ディオはハルエラが言っていたことを再び思い出した。

「…刻印か」
「ええ」

彼女は小さく頷き、服の胸元のボタンを外し始めた。ディオは慌てて彼女に背中を向ける。彼女は左の袖を引き、左肩を露にして「どうぞ」と静かに言った。ディオが振り返ると、たしかにそこには何かの刻印がはっきりと刻まれていた。

「この刻印が証拠だそうです。育て親には、過去のことは忘れろと言われました。おかしな話ですよね、知りもしないことを忘れろだなんて」

それだけ言うと、彼女は服を戻した。

「でも…たまたまって可能性だってあるじゃないか!」

ディオは何とか声を絞りだしたが、彼女は悲しい顔をして叫ぶ。

「私だって必死に説明しました!でも、信じてくれる人なんて誰も…誰もいなかったんです!」

彼女は泣いていた。その表情は孤独にさいなまれた彼女のこれまでの人生を象徴しているように見えた。

「残念ですが、他に刻印を持つ人は見つかっていません。近いうちに私は処刑されるでしょう」

彼女の瞳には諦めの色さえ見えた。彼女自身、自分が処刑される運命にあることはわかっているようだ。

「それで…それでいいのかよ、ホントに」

喰らいつくディオに、彼女はきつく言い放った。

「お願いします、もう私に関わらないでください!私に関わったら、きっとあなたにまで災いが降りかかります!」

彼女は背を向けて、再びうつむいて何も言わなくなった。ディオはそれ以上かける言葉が見つからなかった。




その後見張りの間中、二人は一言も喋らなかった。ディオは内心ではやはり彼女のことが気になってはいたのだが、彼女の方はディオのことを見ようともしなかった。そしてそのまま交代の時間がきて、ディオは次の兵士に後を託し、そのまま上の階へと上がった。

(せっかく人が心配してやってるのに…畜生!!)

彼女の態度に少し憤りを感じながらも、彼は彼女が見せた刻印のことがなぜか頭から離れなかった。

(あの刻印が、彼女が罪人であることを示しているのか)

そう思うとなぜか悲しくなる。彼女自身、記憶喪失で何も覚えていないのに、その刻印のせいで彼女は『魔女』のレッテルを貼られたのだ。

(誰も信じてくれなかった…か)

先ほどの彼女の悲痛な叫びが思い出される。そして自分の中に、何か傷むものを感じた。

(なんで俺はここまで彼女のことが気になるんだ…?)

彼はプロンテラ聖騎士団の一兵士である。本来なら彼が首を突っ込むようなことではない。だが、彼はどうしても彼女のことが気がかりだった。

(そうか…彼女はあの頃の俺と……)

ディオは拳を握り締める。と、その時、どこからかかすかに声が聞こえてきた。

「では、予定通り魔女の処刑は明朝に行うということでよろしいのですね」

ハッとしてディオは辺りを見回す。通路には誰も見えない。するとまた別の声がした。

「あれからもう一週間か」

声はちょうど彼が通りがかった部屋の中から聞こえた。その声にディオは聞き覚えがあった。国王トリスタン3世だ。

ディオは物音を立てないようにそっと部屋のドアに耳をそばだてた。

「これ以上は待てません」

もう一人はどうやらヴェルナーのようだ。

「これだけ時間をおけば、ハルエラ達もそう強くは出てこれまい」
「ええ、それにこちらには刻印という証拠もあります」
「よろしい。では明朝彼女を処刑する。くれぐれも、他の者や民衆には漏れることのないように」
「はっ、心得ております」

会話が終わりに近づいたので、ディオはすばやく部屋の前から離れた。

(…)

狭い通路を歩きながら、ディオは黙って考えていた。
彼女が明朝に処刑される。あんなに悲痛な表情、叫びを見せた彼女が…
本当なら、ディオはさっきの会話に割り込んで彼女の処刑をやめさせたかった。だが、彼はあくまで一兵士にすぎない。彼がいくら訴えても、願いは聞き入れられないだろう。それどころか、下手をすると彼女の処刑が早まる可能性もある。

(俺がすべきことは何だ…)

とにかく今は彼女を助けたかった。ヴェルナーの言うとおり、本当に彼女は人を殺したのかもしれない。彼女が無実である証拠は今のところ何一つないのだから。

だが、彼女は同時に記憶喪失なのだ。ちょうどその事件より以前の記憶が。これは偶然にしてはできすぎている。空白の時間を埋めないまま彼女が処刑されるのがあまりにも理不尽に思えた。

そのとき、前のほうで声がした。

「あら、ディオ。浮かない顔をして、どうしたの?」

顔を上げると、そこにはハルエラが立っていた。聖書を片手に持っているのを見ると、礼拝の帰りだろうか。

「ハルエラ様…」

浮かない表情をしているディオを気遣ったのか、ハルエラはいつもの優しい笑顔を見せた。

「何か困っていることがあるなら、話してごらんなさい」

彼女の言葉にディオは少しためらったが、やがてハルエラの元に近づき、そっと尋ねた。

「ハルエラ様。…人に、誰かに自分を信じてもらうにはどうすればいいのですか」

ハルエラは少し驚いたようだった。ディオが、今までに見たことないほど真剣だったからだ。何かあったのだろう、とハルエラは直感した。そしてそんなディオの頭を軽く撫でながら言った。

「よく聞いて、ディオ」

彼女の顔をディオは間近で見つめた。いつ見ても、優しい笑顔である。

「人に信じてもらうためには、まずあなたがその人を信じてあげなければなりません。そしてもう一つ」

ディオは次の言葉を待った。

「…自分自身を信じなさい。たとえどんな道であっても、自分が信じる道を行くのです」
「…はい!」

何か確信に満ちた表情をディオが見せる。それをみてハルエラは安心した。もう大丈夫、彼女はそう感じた。

「ありがとうございます、ハルエラ様」

ディオは敬礼して、自分の部屋のほうへ駆けていった。その後ろ姿を、ハルエラはにこやかな表情で見送った。

(そうだ…もう迷ってる時間はないんだ)

ディオは次第に走るスピードを上げる。すれ違う女中達が驚いて彼のほうを振り返るが、ディオはそんなことは気にもとめなかった

彼女の処刑が刻一刻と迫っている。それと同時に彼の頭の中にも幼い頃の記憶がよみがえる。血塗られた少女の姿と幼い頃の自分の姿が重なった。

(彼女と俺は…似たもの同士なんだ)

自分の中の迷いを振り切るように、彼は全力で走った。

(第3話に続く)





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