>
スポンサーサイト
--/--/--(--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
この記事のURL | スポンサー広告 | ▲ top
The Ghost Lady -風に消えた修道女- 後編
2006/03/13(Mon)
The Ghost Lady -風に消えた修道女- 後編

ギルドの溜まり場に戻った後、私はずっと黙り込んでいた。メンバーも皆心配なのか声をかけてくれているらしいが、彼らの声も今の私には届かない。私に残されたのは虚しさと誰にぶつけていいのかもわからない憤りだけだった。

自分の部屋に篭り、夕食もとらず、恐ろしいほどの静寂を保ったまま夜を迎える。部屋の中は真っ暗、窓からかすかに光がもれるほどで、外からは聖なる夜を祝う人々の声がかすかに聞こえる。中央広場のツリーには今頃明かりがともされているころだろう。

私は自分がどうしたらいいのかわからなかった。自ら首をつっこんだことではあるが、自分にとって何がいいのかわからない。せっかくのクリスマス・イヴなのに...


『もしあの人を見かけたら、伝えてください。イヴの夜に、この場所で待っている...と』


あの人の言葉が頭によぎる。そしてその時の彼女の表情が。

決めた...私は起き上がると部屋のドアを開け、コートを手に取った。そしてわき目も振らず、一目散に玄関を飛び出した。後ろのほうで仲間が何か叫んでいるが、私はそれに答えることも足を止めることもなく、中央広場のツリーめがけて走り出した。

とにかくもう一度彼女に会いたい、ただそれだけを願って。

吐く息は白く、朝よりも空気が冷たく重い。息切れしそうになっても私は無我夢中で走り続けた。彼女ともう一度話がしたい。今日のことについて、本当のことを知りたい。そう思いながら...

中央広場は人々であふれかえっていた。私はその人ごみを無理やりかきわけながら中央のツリーの前へと躍り出た。そして、昨日彼女がたたずんでいた場所に目をやった。


…そこに彼女の姿はなかった。


私はその場に崩れ落ちた。やっぱりだまされたのだ。あの人はただ私をからかうためにウソをついたのだ。悔しさが胸の奥からこみ上げる。あんなに苦労して探し出した男に、怒鳴られまでしたのだ。もう泣いてしまいたくなった。






だが…ふと顔を上げると、私の目線の先にあの人がいた。

彼女ではない。彼女が恋人といっていた、あの男性だ。

どうして彼がここにいるのだろう、昨日はあんなに私の言うことを否定していたのに...そう思っていると、彼のほうが私に気づいた。

「君は…昨日の…」彼は私のほうに近づいてきた。やばい、きっとまた怒鳴られる。勝手なことをいったうえに、彼女はそこにいなかったのだ。私は逃げ出そうとした。だが、足が動かなかった。

しかし、彼は私の予想に反し、座り込んでいる私に手を差し伸べた。私は戸惑いつつも、彼の手をつかみ、立ち上がった。

『あの…』私は彼に謝ろうとした。だが、私がそれ以上言葉を続ける前に彼がさえぎった。

「…君の言うとおり、彼女はここで待っててくれたよ」

え・・・私は彼の言葉に辺りを見回すが、やはり彼女の姿はない。もしかして、もう帰ったあとなのだろうか。だが、私の疑問はすぐに消えることとなった。

彼は大きなクリスマスツリーの、ちょうど彼女が立っていた真上の枝を指差した。私が振り仰ぐと、彼の指の先には小さなロザリーがツリーの飾りとしてつけられていた。

「あれは…彼女が聖職者(アコライト)に転職したときに俺がプレゼントしたものなんだ」

彼はそういって笑った。だが、目には涙があふれていた。




私はその後、彼から真相を明かされた。私が出会った修道女は、二週間ほど前に不慮の事故に巻き込まれて亡くなったのだという。ちょうどこの広場にツリーが設置された翌日の出来事だった。彼女の死を知り、彼は自暴自棄になっていた。

そこへ、私が現れた。当然ながら死んだはずの彼女の話を始めた私に対して、悪い冗談だと怒りを覚え、怒鳴りつける。だが、どうしても気になってここにきてみたらしい。そしたら彼女にプレゼントしたはずのロザリーがツリーに飾り付けられていた、こういうわけである。

では、私が見た彼女は一体何だったのだろう。そういえば、周りの人は彼女に目もくれなかった。関心がないだけかと思っていたけど、もし彼女に興味がなかったのではなく、最初から彼女のことが見えていなかったのだとしたら...

私は彼女の幻に出会ったということになる。なぜ私にだけ彼女が見えたのかはわからないが、もしかしたら死んだ彼女の思いを彼に伝えるために、神様が二人に贈ったプレゼントなのかもしれない。

今はもう見えない彼女の幻。きっと彼女は自分の思いをロザリーに託したのだ。クリスマスツリーの飾りは、人々がそれぞれの願い・思いを込めて飾り付ける。きっと、彼女はクリスマスツリーが設置された日に、イヴの夜に彼と会うことを願って思い出のロザリーを飾り付けたに違いない。

あるいは、死んだ彼女の代わりに神様が...

最後に彼が見せた涙は何を意味するのだろうか...だが、きっと悪い意味ではないはずだ。

ふと頬に冷たいものがあたった。見上げると、空から小さな白い光が無数に舞い降りてくる。






彼女をかき消した風は、もう吹いていない...







[『The Ghost Lady -風に消えた修道女-』 完]
スポンサーサイト
この記事のURL | RO Short Story | CM(0) | TB(0) | ▲ top
<<3年目の御守り | メイン | The Ghost Lady -風に消えた修道女- 前編>>
コメント
コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する


▲ top
トラックバック
トラックバックURL
→http://fily02.blog57.fc2.com/tb.php/17-5d7ced0c

| メイン |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。